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[コメント] ニノチカ(1939/米)

もちろん、凡百のコメディとは比べ物にならない面白さのある映画だが、私はルビッチの中では、シチュエーションに頼り過ぎのコメディに思える。あるいはガルボに頼り過ぎにも見える。
ゑぎ

 それは別に演出がグレタ・ガルボに頼っているからではなく、ガルボに圧倒的な魅力があるから結果的にそう見えている、のかも知れないが、例えばディートリッヒを主役にして、ディートリッヒよりもドアが主役じゃないかと思えるような作品に比べると、演出の比重が小さいように思えるのだ。

 さて、有名な、レストランでガルボが大笑するシーンは、その笑い出しを見せない、という演出がいいですね。この後、あっという間にに2人が恋仲になるのも良い部分だが、その代わり、序盤で楽しませてくれた三人組が消えるのは寂しいと思う。また、クラブでガルボが大公女−アイナ・クレアーと対峙し、シャンパンで酔ってダンスをした後の、女性化粧室での振る舞いを見せない演出がルビッチらしい。ブランデーを何杯もお代わりするメルヴィン・ダグラスがいい。

 そして、終盤のモスクワのシーンで、ベラ・ルゴシの長官が出て来る場面は、窓外に降る雪のショットからトラックバック。この雪のショットは素晴らしい。そのすぐ後の、コンスタンティノーブルの空港の場面では、高い俯瞰のクレーン移動ショットで三人組を見せる。というように終盤に良いショットが連打され、ポイントが上がる。ダグラスの登場も、唐突な出現で、ガルボの大笑の演出と呼応するかのようだ。こうやって終盤できっちり演出の妙味を楽しませてくれるのが、やっぱり非凡なところなのだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)jollyjoker[*]

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