[コメント] 百万円と苦虫女(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
負の連鎖です。デフレスパイラル。姉の犯した純真な犯罪により、前科一犯となった姉とそれが理由でいじめにあう弟の物語が全く重なることなく進行します。そして最後に・・・
まず蒼井優さんが素晴らしいですね。彼女の演技の才能は『フラガール』で確実なものとなりましたが、こういうシンプルでつかみにくい映画の主人公を演じることって、結構難しいと思うんですね。相当な感性の高さと思いが強くないと、こんな演技は絶対できっこない。それほど彼女の才能は素晴らしいと思いますね。
21歳の女性は、ルームメートに猫を殺され、その怒りで部屋のものを全て捨ててしまいました。それがもとで刑事告訴され刑務所に入ることに・・・
新聞配達 クリーニング 海の家 農家 花屋
などなど職業と土地を転々とするんですね。 ある意味ロードムービーなんでしょうか。
最初、彼女が刑務所を出て歩くシーンから惹きつけますね。このバランス。刑務所の壁と青い空。刑務所の壁が画面を斜めに遮りますね。この不安定な要素が彼女の未来を物語っています。でもそれはこの空の青さと同じで、必ずしも悲観的ではない、そんな未来を予感させますね。
この監督は才能がありますね。才能とは、脚本化として、そしてアーチストとしての才能ですね。登場人物の背中側に空間を作る手法とか、画面構成が見事。だから見ていて単調なシーンでも全く飽きませんね。素晴らしい才能です。
ほめる以外に何もコメントできませんが、最後のどんでん返し
・弟からの手紙で逃げていた自分を見直そうとする決意 ・花屋で知り合った彼、実は彼女と離れたくないために、わざとお金を借りていた
いいですよね、こういうシンプルな展開。わかりきっているとはいえ、とてもいい。
そして最後も彼女と彼が結局結ばれない(のではないか?)と思わせるところも良いですね。
「くるわけないか、」
のセリフもいいですね。
途中「自分探し」というセリフが出てきますね。彼女はそれを全否定し、「むしろ自分を探したくない」と答えます。このセリフの関係が丁寧でよろしいかと思います。
きっと何度見ても感動できる映画ですね。
2009/03/18
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。