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[コメント] ブラック・スネーク・モーン(2006/米)

巨体サミュエル・L・ジャクソンとベイビードール、クリスティーナ・リッチの取り合わせ。彼女の細いウェストに太い鎖を巻きつけること。それらの視覚的な独創性が映画に豊かなディテールをもたらしている。
shiono

**ネタバレ注意**
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巨大な耕運機を背景に、ウエストを晒して歩くクリスティーナ・リッチというメインタイトルが格好いい。サミュエル・L・ジャクソンの家屋や畑の描写もいいし、日曜の朝の幸福感もよく出ている。

だがやはりおもしろいのはリッチが鎖で縛られてからだ。奴隷制度という単語を否応なしに想起させるモチーフだが、この両者の会話劇はささやかなユーモアすら漂う絶妙なニュアンスで推移し目が放せない。それはリッチの下半身から目を逸らすのが難しいこととの相乗効果にもよる。

ここでリッチの容姿が最大限に発揮される。痛々しくも生臭くもなく、適度なエロスを伴った好奇心に観客の心は奪われてしまう。脱走未遂と散歩、来訪した黒人少年リンカーンへの誘惑と、アクションを伴うシーンの充実は本作の白眉だ。

こちらも味わい深い脇役である黒人牧師RL(ジョン・コスランJr)の来訪を経て、リッチがワンピースに着替えてからは、丁寧な人間ドラマのビルドアップがある。フラッシュバックやスローモーションなど、いささかケレン味のある演出は気になるし、ジャクソンの歌もパーフェクトとは言えないが、まず良心的で堅実な語り口だ。

終盤の誤解と和解のプロセス、そこによぎる不安な影もまた、類型を越えようとする工夫が見受けられる。台詞がいいのだ。ここに至り、リッチの腹部を縛っていた鎖は、子を宿す臓器を護ってもいたのだと気づかされたのだった。

(評価:★4)

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