[コメント] 紳士協定(1947/米)
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「反撃するのは気分がいい」という気づきに至る物語だが、しかし何という気づきだろう。「恥じ入り、軽蔑して座っていたわ」というドロシー・マクガイアの消極性は徹底的に否定される。アメリカらしいし、BLMに至る有色人種たちのスタンスもこれを共有するのだろう。
名前を変えたらこのリベラルな雑誌社に採用されたと告白するユダヤ人秘書。彼女は語る。「ユダヤ人は問題を起こすのと、私みたいな者と二種類です」。社長は語る「臭いものには蓋ですな」。ユダヤ人を泊めないホテルを「非開放」と隠語で云われる。「町には紳士協定がある」反対すると物も買えなくなる、とボソッと語られる。ユダヤ人のジョン・ガーフィールドは語る「うちの子供はキャンプに誘われず置いてきぼり」。
ペックの息子は「汚いユダヤ人」と云われて泣く。ドロシー・マクガイアは貴方はユダヤ人じゃないと云って慰めてしまう。「落第ね」と顎を少し上げて抗弁する。「私はユダヤでないことを喜んでいるわ。私の優越感は現実よ」。
このように、白黒明白なレイシストばかりでなく、中間的な人物を多く配したのが本作を興味深くしている。
本作は創作体験としても穿った処があるのがいい。「よしと思って掘り下げると、とたんに退屈な統計や抗議文に早変わりする」のでは駄目だ、という創作理念は具体性を尊ぶハリウッドらしい。
アインシュタインのような博士はパレスチナとシオニズムについて「前者は避難所、後者は国家建設」「中間は混乱」と語られるのが47年を記録して生々しい。アン・リヴィアの母親がとてもいい。邸宅を案内するとき天井に影が走るのが面白い。キャメラはアーサー・C・ミラー。
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