[コメント] キサラギ(2007/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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同名の舞台劇を元に制作されたヒッチコックを思わせるワン・シチュエーション・コメディ。
当初全然観る気は無かったのだが、妙にネットの評価が高かった。というそれだけの理由で観に行ったのだが、これが又、実に上手い作品に仕上がっていて正直驚いた。密室のワン・シチュエーション・コメディだけに金はかけられていないが、謎の一つ一つが、キャラの一人一人が見事にはまる。
映画のミステリーとしては上質。発言の一つ一つ、当時の行動の全てがまるでパズルを思わせるようにピースがパチンパチンとはまっていく様子は観ていて快感。何よりも、間の取り方の上手さのお陰で、キャラクタが新しい事実の結論を出すほんのちょっと前に視聴者には分かる。と言うのが心憎い方法であろう。それまでのキャラの様々な言動がまずは視聴者の頭の中で全部収まるべき所に収まっていくのは一種の快感でもある。それでふんだんに笑いも取っているし、元が舞台劇だけに随分練り込まれた最上の部分を映画化してくれたって感じ。ここに集まっている五人が何らかの形で全員事件に関わっていたと言うオチも秀逸。特に小栗旬演じる“家元”が、「俺こそが第一のファンだ」という自負がどんどん崩れていって、最後にフォローが入った所なんかは、あれはまさにファン冥利だろうね(それが死の原因だったとすれば複雑だろうけど)。
ちょっとだけ不満があるとすれば、物語中徹底して顔を見せなかった如月ミキの顔を最後にビデオで見せてしまったことと、ラストの宍戸錠の登場だが、これは解釈次第だろう。緻密な謎解きが続いただけに、最後にちゃぶ台をひっくり返すのも悪くいない。
そう言ったメインストリームだけでなく、小技でも楽しませてくれる。
とりあえずユースケ・サンタマリアがオダ・ユージと名乗る楽屋オチがあって、「事件は現場で起きてるんだよ」という痛々しい(?)ギャグもあるが、それはまあ置いておく。
オフ会というのは一種特殊な空間で、特に最初のオフ会の緊張感は独特なものがある。「私は浮いてないと良いけど」と細かいことばかり考えてる内に、本来喋るべき事を忘れてしまって、何も言えずに帰ったり、主催者は主催者で、暴走する人間をどうやって制御するかばかり考えている内に時間が過ぎてしまい、頭を抱えるとか、ネットの人格と実際に会った印象がまるで違い、ネットでいつもやってるやりとりが出来なくなるとか、様々な思いが交錯するものだ(一応そこら辺はだいたい経験済み)。それで、そうこうしてる内にだんだんとうち解けていくのもオフ会の醍醐味って所だろう。特に前半の雰囲気はまさにそれで、自分自身の身に置き換えてしまい、背中の辺りがむずむずしながらにやにやと。よく分かっておられることで。
後、これは私限定の楽しみ方なのだが、「6時間かかってこのためにやってきた」という“康夫”が、一体どんな田舎からやってきたのかと思ったら、なんと私の故郷の隣町だったりするところ。在住の友人だって結構いるんで思わず吹き出してしまったよ(数年前の市町村合併を拒んだお陰で同じ町にはならなかったけど)。そうか。私の故郷ってそんなに田舎なんだ。
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