[コメント] ゲゲゲの鬼太郎(2007/日)
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私が小学生の頃見ていた『ゲゲゲの鬼太郎』は、記憶も曖昧ですけど、もっとこう・・・ペーソスに満ちた感じの…うーん、不気味な中に潜む物悲しさとでもいうのか、あるいは寓意的というのか、そういったものがもっとあったと思うんですけど、映画版の『ゲゲゲの鬼太郎』にはそう言ったものが全くありませんでした。
私が見ていた頃のアニメでは大抵の場合、妖怪の方にも言い分があって、例えば人間たちに住んでいるところを破壊されたりして、そういうところから妖怪たちの怒りが出てきて、鬼太郎は妖怪を懲らしめるものの、人間と妖怪の間を取り持ち、人間も妖怪たちの言い分を理解して・・・とかそう言った流れで話が進んでいってたと思うんですが、映画版も表面上は一応そうなってはいたけれど、なーんかそれが切羽詰っていないというか(妖怪側も人間側も)特に重大な事ではないように見えますよね。
妖狐たちの住処を人間たちに侵略されているという事を、冒頭の工事現場で起こる事故で表現したかったのだろうけど、これがかなり中途半端。子供たちがラストまでこの事故を覚えていられるのか心配になるほどの中途半端さ。
そして本来は妖狐たちの石であるにもかかわらず、まるで妖狐たちが横取りしようとしているように見えてしまう不審なストーリー展開。完全に妖怪を「悪」に仕立て上げようとしているところがすごく目につく。大体さぁ、何か悪い事しました?あのキツネたち。石を奪い返す為に乱暴な事はしているけど、そもそも奪ったのはネズミ男ですからね!諸悪の根源はネズミ男ですよ!(これはアニメでもそうだったと思うけど…)
それをさも狐たちが悪いように描くのはどうかと思う。しかも最後、妖狐が神社に油揚げをお供えしてほしいという願いを鬼太郎に伝えたアレは一体どうなってしまうの?今回の一件は人間たちの記憶を消す事によって「ゼロ」になってしまった訳ですよね?それって本当に何も意味がないように思うんだけどなぁ。教訓として何も活きてこないですもん。き・・・鬼太郎がお供えするのか?
あと、やっぱり一度死んだ人間が生き返るというのも私的には納得がいかない。しかも子供向け作品であればなおの事。生を軽んじるような表現は好ましくないなぁと。そもそもお父さんの病気ってのは何な訳?アレは妖怪が意図的に発病させたのか、それとも元々そういう運命だったのか、そういうところも曖昧!!私はそれがお父さんの運命であり、妖怪はそれを知っていたダケだという風に取ったんですが…。
妖怪は怖いからこそ意義があるんだけれども、それは「恐怖」ではなく「畏怖」であるべきなんですよね。今作に出てきた妖怪に、畏怖の念は抱けないし、むしろ悪として人間と敵対する存在になってしまっていたのが悲しい。結局は、最近の子供たちには説教臭いストーリーは受けないという事なんでしょうかね?でも大人の立場としては作られた勧善懲悪モノよりも、共存に重きを置いたような作りにしてほしかったなぁと。そう思います。
しかし、目玉おやじの「オイ、鬼太郎」はツボに入ってしばらく笑いが止まらなくなりましたわ。あと最初の「ゲ・ゲ・ゲゲゲのゲ〜♪」って歌、アレは小池徹平が歌っているのか!!てっきりウエンツ瑛士だと思っていたんだけど!!
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07.05.28 記
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