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[コメント] 鰐〈ワニ〉(1996/韓国)

衒いのないフランス映画(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







都市の大河川の畔に暮らす浮浪者を描くところはまさに『ポンヌフの恋人』であり(次回作の『ワイルド・アニマル』ではアレックス(ドニ・ラバン)そのものが登場する)、主人公の無鉄砲ぶりは『勝手にしやがれ』を思い起こさせる。なんの衒いもなく、ソウルをパリに見立てて撮っているところが、逆に素直で好感が持てる。初めて人を愛することを覚えた主人公を尻目に彼女は命を絶ってしまうというすれ違いや、最後に死ぬのを思いとどまろうとする主人公の描写なども、ヌーベルバーグ以降のフランス映画を思わせる。

ただ、ストーリー展開は破滅的にひどい。あの諸条件であんな擬似家族が成立するわけないし(『ポンヌフの恋人』も相当ファンタジー色が濃いが、それでも浮浪者の過酷な状況を織り交ぜている)、あそこで主人公が警察から釈放されるわけもない。あのアジトらしき場所のやり取りなどは、80年代の日本のドラマを見ているような気分になる。その後の飛躍を考えると、映画監督は長い目で見なければいけないんだなと思わされた。(★2.5)

(評価:★2)

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