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[コメント] バブルへGO!! タイムマシンはドラム式(2007/日)

ホイチョイだからこそ、もっと現代と勝負してほしかった。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 バブル当時中学生だった私にとっては、この映画に描かれるような活況はもはやファンタジーであり、無限に出るタクシー券やビンゴで200万なんてのは都市伝説以外の何物でもない。そういう意味で私はリアリティを判断することなんてできないし、その分だけ楽しくスクリーンを眺めることもできた。子供なりにラモスや阿部ちゃんや飯島愛がブイブイ言わしてたのも何となく知ってるし、特に眉太の飯島愛なんてギルガメ世代の私からすれば大変懐かしくもあった。要するに、『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』という映画は楽しかったのだ、途中までは。

 だが、料亭での乱闘シーンの粗雑な演出を見て、そんな「ハードル下げて、ぬるーく眺めりゃいいじゃない」的な気分は一気に冷めてしまった。あまりにひどいよこれは。

 記憶を辿れば、こうした演出の乱闘シーンは当時のテレビドラマなんかでミポリンあたりが繰り広げていた類の代物で、もしかしたらこの映画の作り手は「意図的に」こうした安い演出を施したのかもしれないとも思う。「あー、あったあったこんなの懐かしーよねー」とかヤイヤイ言いながら観たほうが幸せなのかもしれないとも思う。

 だが、この「懐かしさ」は、例えば『フラガール』や『ALWAYS 三丁目の夕日』が目指した懐かしさとはまるで性質の違うものだ。上記2本が「現代の日本映画」という土俵の上で過去を表現したものだとすれば、『バブルへGO』はその土俵にすら上がってないのだ。時代と勝負してないのだ。ハナから「過去の遺物」に逃げ込んでいるのだ。志が低いのだ。

 言うまでもなくこの映画は2007年の映画であって、金を払うのは2007年の客である。ホイチョイが映画の表舞台から姿を消してからの10年余りで、日本映画は間違いなく息を吹き返し始めている。もうこんなホイチョイっとした演出で勝負できるような時代じゃないはずなのに、彼らは堂々とこの映画を作ってしまった。あの乱闘シーンの演出は、個人的な感想を述べれば、たいへん恥ずかしい創作行為だったように思う。かつての湯水のように金を使えた製作環境が彼らの創作魂や時代に対する勝負勘をスポイルしたのかもしれないと考えると、バブル経済はホイチョイにとってもいいことばっかじゃなかったのかもね。

 とか言いながら、ヒロスエのコスプレが文句なく可愛かったので★+1デス。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)煽尼采 すやすや[*] sawa:38[*]

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