だから映像技術が更に進化すればひょっとしたらこの映画も霞んでしまう日が来るのかも知れない。しかし、それはひょっとしたらであり、この映像魔術の爽快さは『風の谷のナウシカ』(宮崎 駿)の飛翔シーンを初めて観た日に匹敵する。

作品世界とアニメ技術の融合の見事な成功例だ。これはスタッフの愛情と真剣さと忍耐強さのなせる業だ。原作自体が読者にアニメ映像を想起させる作品だったが、それを見事に作品化させるには実際には(技術的に)今日までの時間が必要だっただろう。『AKIRA』や『スチームボーイ』(大友克洋)では描ききれなかった人間も、原作をこよなく愛する監督やスタッフの情熱によって見事に表現された。原作者大友克洋と松本大洋の人間力の違い、監督大友克洋とM.アリアスの違いが顕れてしまったとしか言いようがない(ぼくは長年の大友ファンだが、最初から彼の限界に気づいている)。『イノセンス』(押井 守)『パプリカ』(今 敏)にも足りないものがこのアニメにはあった。

求められる最高の出来と思われるので☆５点をつける。しかし心の中では予想を遙かに超える作品を求めているのだが…。