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[コメント] 喜劇 特出しヒモ天国(1975/日)

まず、殿山泰司の説教坊主、これがオモロい。最初のシーンで芹明香が酔っぱらって法話に参加しているカットがあるのだが、殿山は芹も含めて他の役者とは誰とも絡まない。続いて、池玲子が歩いて来て、ストリップ小屋に入る。
ゑぎ

 池は、すぐに服を脱ぎ、胸が露わになる。素晴らしい!踊り子には他にカルーセル麻紀絵沢萠子中島葵らがおり、お話が進んでから踊り子になる女優として、先の芹明香や、藤原釜足が工事現場でスカウトする大女の松井康子、聾唖者の森崎由紀がいる。藤原は踊り子のヒモだが、この、タイトルにもなっているヒモ連中には、主人公と云っていい、元カーディーラーの山城新伍、芹のショーのガサ入れで引っ張られて免職になった元刑事の川谷拓三、カルーセルの恋人の川地民夫、森崎の夫で同じく聾唖者の下絛アトム、といったところで、これらが主要キャストだ。

 踊り子たちは、一つの小屋の興行が終わると、各々が別の地方巡業へ旅立つ、といったかたちで、人が入れ替わるのだが、皆が旅立った後、山城と池が二人で泊まる京都のホテルの場面は情感たっぷりだ。こゝが最も良いシーンかも知れない。山城は池に付いて、大阪へ行き、完全にヒモ生活に入るが、ブラジャーを足で扱ったことで、池に見限られる。これなんかも池のキャラがよく出ている。しかし、山城は芹明香のヒモに鞍替えする、といった早い展開。

 藤原釜足も見せ場が多く、絵沢にバクチで負け、ズボンを脱がされるシーンで、ふんどし一丁になる絵面が可笑しい。あるいは、踊り子の中島葵と、次回に向けた反省会を律儀に行う場面もいい。こゝで「黒の舟歌」を唄うのだ。

 森崎演出の破壊力が一番爆発するシーンは、やはり、終盤の京都の小屋での本格的なガサ入れの場面だろう。こゝは、大乱闘、大混乱シーンだ。混乱の度が過ぎる感もあり、山城は大怪我を負ってしまう。この流れの中で、プロットの焦点が一転し、聾唖の夫婦、下條と森崎のお話にシフトするのも凄いのだが、さらにエンディングは「黒の舟歌」を合唱しながら護送される女たち、とりわけ、芹明香で締められるのだ。「男と女のあいだには深くて暗い河がある」という歌詞。山城と池、山城と芹、下條ら聾唖の夫婦のことを思わせられながら、いや、映画を超えた普遍でもある、という感慨を持つ。

#備忘

・序盤の屋台での乱闘シーンで、渡瀬恒彦工藤栄一深作欣二名和宏室田日出男志賀勝野口貴史らが特出する。工藤が屋台の大将、渡瀬は客。

・絵沢の元ヒモ役で岡八郎がワンシーンのみ登場。間違えて芹の寝間へ入る。

(評価:★4)

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