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[コメント] 出来ごころ(1933/日)

概して「喜八もの」は、単なる人情喜劇として見るにはシリアスに過ぎる。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







確かに前半の展開においては小津史上最も浮かれる男・喜八を見ることができるし、多くの笑える台詞で彩られてもいる。 しかし、中盤での坂本武に対する突貫小僧の反抗と和解(抱擁)には涙を禁じえないし、坂本が自らの学の無さと稼ぎの少なさを悔いる場面には胸を締めつけられる。北海道行きを決意した坂本を前にしての突貫と飯田蝶子の泣き顔を目にして覚える私の動揺は、たかが「上質の喜劇」によるものとは到底思えない。ラストにおいても、ただの微笑ましいハッピーエンドとして片付けてしまうにはあまりにも痛切な感情の渦巻きを坂本の中に見ることができる(にもかかわらず坂本は何とも云えないノンキな顔をしてて、そこがまた感動的なんですけどね)。

江戸情緒を色濃く残す長屋を舞台にしたこの物語は、現代の私たちの目からはほとんど時代劇にも見える。しかし、時折挿入される不気味なガスタンクのカットが示しているように、小津が「現在」に対する言及を怠っていないことも忘れてはならない。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう

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