[コメント] オーケストラ・リハーサル(1978/独=伊)
政治的なメッセージ云々よりも、寓話の恐ろしさを感じさせるイマジネーションに畏怖SO-SO
フェリーニ映画で戯画化される登場人物は、いつもグロテスクな童話の人物のような怖さを湛えており、それらが動き出す映画にはおぞましき喜びとでも呼ぶべき感覚が満ち溢れている。美術家でもあるフェリーニの資料には、よく戯画化された人物画が散見されるが、彼が人間存在を鋭く見つめたうえで照射する醜悪なメンタリティという一面がことさら強調された作品として心に残る。かつて中学生だったか頃に観た時、美しいピアニストが喧騒の最中に男と寝るというシーンは衝撃的に受け止めた記憶がある。クラシックの世界とは、品格が要求されるアカデミックな世界でもありうるが、その世界に生息する人物たちの自己中心的な生きざまは狂気の沙汰のごとくに映る。美しいものが醜いものに化ける時、その恐怖は阿鼻叫喚さながらである。俗に語られる政治的イデオロギーを茶化した作品と語られる評言よりも、深層心理に訴えかけるおぞましさへのアプローチこそが、本作の本懐である。
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