[コメント] ニーベルンゲン 第二部 クリームヒルトの復讐(1924/独)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
原典では沢山の騎士の挿話があるが、映画では分かり易くメインストーリーのみを追っていく。
それで見えて来るのは、何人かの男と女の姿だ。具体的には、カッコよくて実力もあるジークフリート、彼と相思相愛で結ばれた主人公クリームリヒト、その兄凡庸な国王グンター、凡庸な男がよく惹かれたりするその妻猛女のブルンヒルト、姑のウーテ(原典では出番が少ないが、私は注目したい)、クリームリヒトの再婚相手で分別のある男アッチラ王、そして副主人公の忠臣ハーゲンだ。
ハーゲンについて一言。どの文献、批評をみても‘奸計を弄する悪の権化’的に書かれているが、本映画の作者はそう思っていないようだ。私もそう思うが、徹頭徹尾忠臣なのだ。人は見る方向で、その態が変わる。彼の言動もお家一番から発したとみれば、すべて納得がいく。彼は剛力だけの男でもないし権力志向の男でもない、と断言したい。
もう1人、アッチラ大王について。クリームリヒトに言うセリフ、「クリームリヒトよ、愛で1つにはなれなかったが(敵を)憎む事で1つになれた」―可哀想なアッチラ。に対して彼女が言う「アッチラ殿、私は今ほど愛で満ちた事はありません」―誰への愛だ!更に可哀想なアッチラでした。美女とつき合って、こういう男は世の中には多い。
さて上記6人の思いが様々な展開を紡ぐ訳だが、残るのはクリームリヒトの愛の情熱 対 ハーゲンの一途な忠誠心。勝つのは、(当然ながら?)愛の方だ。結局お家(会社)大事と励む男は、女の情熱に蹴散らされるのだ。
映画のクリームリヒトの最期が分かり難い。原典では「武器を持たない、縛られた勇者を斬った」として、誉れの高い騎士が彼女を叩き切った、としている。男の論理が女に一矢報いた形だが、映画の作者はそうしたくなかったようだ。心臓発作のような形で死ぬ。男ではなく、神によって死ぬという形か?(町田さんのコメントもここを言われている様だ)
どちらにせよ、私―凡庸で英雄でも勇者でもない私は、ただただ立ち尽くすアッチラと同じで、どんな判断も出来ず見守るしかなかった。
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