[コメント] ヴェラ・ドレイク(2004/英=仏=ニュージーランド)
黄金の心を持つのはヴェラだけではない。
彼女が後半どうなるかわかるだけに、丁寧に彼女の幸福な日常を描く前半は見ていて辛い。彼女がどんなに、周囲の人々にとって不可欠な人間であることか。彼女は、毎日まわりの人々のために犠牲を払う。もちろん彼女はそれを犠牲だなんて思うことはない。
50年代ということは・・・と考えてみる。ヴェラは私たちの祖母や曾祖母にあたる。私は自分の二人の祖母を思い出す。どちらも、自分の生まれた土地をほとんど離れることなく、おそろしく働きづめの一生を送った。父方の祖母は大勢の家族の世話をしながら、戦後は、隣家の病気の母親の代わりにその小さな子ども達の面倒もみた。母方の祖母は戦争で夫を亡くし、一人で3人の子供を育て上げた。二人とも子や孫に世話をかけることをいやがり気に病むような人だった。笑顔のやさしい、心もやさしい人たちだった。
きっと、かの地では、私たちが感じるよりずっと堕胎の罪は重いのだろうと、この映画を見て想像する。ヴェラはやはり罪を犯したのだろう。
しかし、愛は広いのだ。夫スタンの言うとおり、もし罪を犯したのがヴェラ以外だったら、ヴェラは、愛する人のどんな罪でも赦したろう。
夫スタンの素晴らしさは、もうこれ以上ないほどだ。
海を越えて、私は、古き祖父母の時代の、家族の美しさと犠牲の美しさを見るのだ。
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