[コメント] アメリカ(階級関係)(1984/仏=独)
関係の中で立ち現れる状況というものを克明に形象することを主眼とした文体が裸形のポエジーを生むも映画特有のレトリックに薄いSO-SOムービー
原典はフランツ・カフカということで、ストローブ=ユイレの本映画化でもオフビートなミステリアスという微妙なテンションが与えられており、言語芸術のストイックな映像化という点では特筆すべき個性である。そのカット構成、モンタージュに非凡な才を見せるストローブ=ユイレの作業は、そこに情動的なストーリーテリングを排し、構図、人物の配置を巧妙に設定することで、カフカ特有のテクストの本質に迫ろうとしている。その意味で本作は裸形のコードが随所に織り込まれて解読的な鑑賞を求めるようでいて突き放す厳しさを持っており、浮き彫りとなる意味は副産物のようなものとなっている。ゆえにその映画文体の特徴的な味わいについては、カフカのテクストへの親和性を見せて野生のポエジーの薫香に達してはいるものの、映画という媒体からの返答というべきレトリックは物足りなかった。語るべきことではなく、語り方にこそその本質を垣間見せるストローブ=ユイレの旨みは、この程度では平凡である。
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