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[コメント] 東京日和(1997/日)

竹中らしい細かい配慮が、行き届いた力強い作品だ。時にズバッと入る人物の遠景が、心地良い。荒木は好きではないが、岩松は昔から好きだ。本作もよく出来ている。
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







‘無意識に思い込んでしまう’と言う事は、誰にでもよく有る。そして、それに気付く事でその人への理解が深まり、親近感も増していくのだ。

劇中こういうエピソードがある。病院。女の先生が言う、「奥さんよね」竹中「ええ。えっ、どうして」「いや若いから」。先生には夫婦というより、不倫中か何かワケありの年配男と若い女と映ったのだ。

次にこういうエピソード。旅館。女中(藤村志保)が2人の事を忘れている。竹中がこっそり毒づく、「客は俺たちだけだったし、新婚旅行だぜ!」。が、突然思い出す藤村さん、「思い出したわ!新婚旅行でしょ。2人でしょ。ウフフフ」。この「2人でしょ」に強く引っ掛かる。前のエピソードもあり、観客はピンとくる。―新婚旅行なんて、嘘。ホントは年配の男と若い女の不倫旅行―と藤村さんが無意識に思い込んでいるのだと、分かるのだ。

そしてラスト。言う迄もなくオープニングと結びついている。‘水谷さん’のエピソードだ。病院、旅館ときて、我々にはもう十分心構えが出来ている。

台所の1ショットを見るだけで、あの時ヨーコが何を無意識に思い込んだのかが、手に取るように分かるのだ。

そして竹中の次のセリフも、分かってしまう。更には竹中の心と共鳴し、その悲しみが違和感なく徐々に伝わって来るのだ。

よく出来た脚本だ。

(評価:★5)

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