[コメント] 愛のそよ風(1973/米)
ケイ・レンツはソンドラ・ロックとヒラリー・スワンクを足して二で割ったような顔立ち。好きです。こういう美少女の魅力をストレートに掬い取る演出もイーストウッドには珍しい。衣裳やギターもいい。「やれやれ」とでも云いたげなウィリアム・ホールデンの無言リアクションは俳優イーストウッドのようだ(逆か?)。
イーストウッドの映画ディレクターとしての総合力の高さはそのデビュー作からすでに証明されていたが、何よりもまず彼がきわめて優秀な語り部であるということを、現在にあってもイーストウッド的とは見なされない題材のこの映画は改めて明らかにしている。単なる男の夢(妄想的願望)物語という謗りさえ受けかねないドラマにみなぎる、映画的充足感。浮気願望を持つ友人ロジャー・C・カーメルや前妻ジョーン・ホッチキスといった厚みのある脇役活用で単純な物語にこそ必要な視点の複数性を手堅く確保し、「犬」「自動車」など映画らしい道具立てでシーンを活気づける。あるいは撮影にしても優に水準を超えている。浜辺の情景の美しさ。暗すぎる照明設計でムードを作り上げる寝室シーン。
レンツの友人であるジャンキー女性のラリ芝居が映画に不釣り合いな不穏な空気を持ち込んでいるのも印象に残る(反社会的なキャラクタや不道徳な物語を好んで取り上げるイーストウッドですが、そう云えばドラッグ絡みのものは意外と少ないかもしれませんね。『バード』は全篇そういうお話でしたけども)。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。