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[コメント] 偶然(1981/ポーランド)

パラレルワールド並置なんて子供っぽい発想の作劇を、すでに21世紀仕様の編集でもって堂々展開、複雑な政治状況が浮かび上がる。上映禁止後に一部カットで公開らしいが、それでもよくこんなの撮れたなとヒヤヒヤさせられる。ラストは秀逸。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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これに公開許可出すのが比較的検閲が緩かったポーランドらしいところか。自由組合、地下出版、地下病院(って何なのだろう)、病院スト・院長監禁、教会協力、党の拷問。これらを主人公は党員・革命家の正反対の立場と、ノンポリ医者の計三者として関わり合う。89年以降の作品だと勘違いさせられた。それほど穿った内容がある訳ではないが、多くの事象が羅列され、伝えたかったのはこの物量なのだろうと思わされる。

いずれも主人公はパリ行を志望していて、前二者では断念、最後は飛行機に乗るが爆破、結局どうあってもパリへは行けませんでした、というとんでもないシニカルで終わるのがいい。最後の飛行機は模型とは全然見えなくて、愉しく騙されて吃驚した。ここで本作への好感度はプラス1点になる。

冒頭は断片が10以上も脈絡なく流されて、このまま2時間続いたらどうしようと思ったがそんな無茶はしなかった。進行に伴い適宜参照されるクライマックス映像集になっていた。全体に撮影は第一級で、ドキュタッチで手作り感のあった『アマチュア』とは印象がまるで違う。付き合う女性が三回とも違うのだが、最初のBoguslawa Pawelecが印象に残る。彼女が配管のうえ歩いて登場する最初の断片のひとつが私的ベストショット。

尺取り虫みたいに階段降りる金属の玩具、あれは何ていうものだったか。ふたりが向かい合って多数のボールを投げ合う曲芸はもの凄かった。「死んでゆく人がほしがるのは一人ではないという確信だ」という引用されたマザー・テレサの言葉が突出して印象に残るが、たぶんそれは映画の狙いではないのだろう。

(評価:★4)

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