[コメント] 大いなる西部(1958/米)
もはや西部劇などという言葉では括れないほどの超ハイレベル作品。あまりの出来の良さに鳥肌が立つ。
「大いなる西部」の成功は壮大な風景-大地、地平線、大空-の描写と丹念な人間ドラマの巧みな融合によるものだ。両要素とも一級品で、かつ3時間近い長丁場にもかかわらず少しもだれず最後までテンションを持続できているのは素晴らしい。
雄大な荒野とグレゴリー・ペック 対チャールトン・ヘストン の殴り合いの大と小の対比!広野と澄みわたるような一点の曇りもない青空の茶色と水色の対比。日本やヨーロッパの映画ではまず見られないだろう。
ドラマ面も手抜かりなく作られている。全てのセリフに意味や深み重みがあると感じた。(ここでいうセリフとは個々の言葉が明確な役割を担っており、各々が物語を構成する歯車になっているということ。これは重要な事だと思う。)
単純な善悪のある勧善懲悪話でないのも興味深い。序盤は悪役的に登場したバール・アイブスもストーリーが進行するにつれ単なる記号的な悪役ではなく人間性を持った役割として描かれている。単なる悪役は奴の息子だけか。
全体的にいっても本作品自体が東部対西部の勧善懲悪の図式には収まっていない。東部的な精神を持つペックが周りの西部人たちを次第に感化させていくのだが、決して自分の考え=東部の意見を善として振りかざしてはいないところが良い。彼は無意識的にではあるけれども西部の未開的な要素だけを変化させていき、加えて西部を拒絶せず西部の地に生きようとする姿勢がたくましい。
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