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[コメント] クローネンバーグの デッドゾーン(1983/米)

この静謐さこそがクローネンバーグの最大の特質だろう。透明な静謐さのうちに「何か」を展開させてゆくという方法論。「何か」とはまさしく未知の項であり、そこには作品や場面によって異なるもの―暴力性/痛覚/グロテスクネス/哀しみ/笑いなど―が代入される。ここではとりわけ哀しみが。
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(殺人鬼がハサミ自殺するシーンなどもあるにはありますが)表面的なグロテスク描写から離れてもこれだけのクオリティの映画を撮れるということは、クローネンバーグが正統的にレヴェルの高い演出力を備えていることを示している。などと云ってみても、それは『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『イースタン・プロミス』という問答無用の二傑作が発表されたのちの今となっては後出しじゃんけんにしかならないのだが、後出しついでにさらに云えば、今挙げた二作のヴィゴ・モーテンセンに至るまで主演俳優の選択はほとんど完璧だ。クリストファー・ウォーケンを雪の情景に置く。脚の不自由な演技をさせる。愛する人とその愛する人が住む世界のために殉じさせる。俳優の独創的かつ正しい使い方をクローネンバーグはよく知っている。

(評価:★3)

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