[コメント] チャップリンの消防士(1916/米)
要所要所で映画的興奮が跳ね上がる細部が肝であるSO-SO作品
ストーリーにはさほど工夫の余地は見当たらず、ホントかウソか1903年、エドウィン・S・ポーター作による『あるアメリカ消防夫の生活』のパロディであるかのような本作。本家に比べてダメ消防夫ぶりはまさに地獄的な様相を呈しており面白い。それはさておき、本作においては、ストーリー構成そのものはいい加減な向きもあるため論はまたないとしても、チャーリーのキャラクター造形はいっそうにキュートでアニメーション的動作において誠に可愛らしい。だぶだぶした服装、意味もなく繰り出される適当な敬礼などは、永遠のいたずらっ子を印象付けて奔放である。また、エドナを救出するためにビルヂングをよじ登っていくチャップリンの身のこなし、救出後、力尽きて倒れてしまったかに見せる階段でのチャプリンのうずくまるカットなどは、それまでフザケにフザケてきた映画とのギャップを際立たせ、ワンカットで全くシリアスな調子を湛えて見せる荒技の妙など、そうした細部に宿る映画力の高さが不思議に面白い。作品の構成要素としてよりも作品に内在するアクとしての旨み。ボケの個性が唯一無二として垣間見える奇作。
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