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[コメント] 高校生ブルース(1970/日)

中学校で回し読みした妊娠啓発の存外生真面目なジュブナイル小説の趣。マスムラ『遊び』も物している伊藤昌洋脚本、ここでも真面目な話を際物然として捌く独特のタッチがダイニチ好み。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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ミス百合丘高校関根恵子は妊娠して「一度や二度は大丈夫って云ったじゃない」と内田喜郎と困惑するジュブナイル小説仕様。内田は関根のテニス姿を覗き見して、関係持ってから何しているのか、変態趣味かと思わされるが回想だった。体育館物置でのソフトポルノはバスケゴールを射精の隠喩にしている。うろたえて「堕すんだ」と訴える内田は鬚面の同級生篠田三郎に相談。後年の生真面目なキャラとは違う陽気な不良を演じていて面白い。SLのLP(中古レコード屋ではいまだに人気があるのだ)かけながら「女中」妊娠させた経験を語っている。

関根は妊婦や子供のいる公園をうろつき、蛙のセックスの写真に魅入り、妊娠したら堕したらいいという同級生女子の会話を耳に挟み、産婦人科の前で母に連れられ泣いている娘を見て踵を返し、庭で蛇見て嘔吐。産むわと内田に告白して内田は「キチガイ沙汰だ」、将来のこと考えてくれと云うが、関根はなんでそんなに隠すのだ、愛しているならバレたっていいじゃない、学校辞めて働いて子供を育てればいい、すぐに別れる積りで抱いたなら、その罰としてうんと苦しめばいいんだわ。

ここから関根は情緒不安定。母伊藤幸子と小父堀雄二の写真みつけて衝撃を受け、小父に肩叩かれて性的含意を感じて平手打ち。不良女子に仲間入りしてゴーゴー喫茶(後年のミラーボール天井のディスコのような描写がある)で酋長の娘のコスプレしてアングラパーティ行くのは子供を流産させたいがためらしい。内田がバイトで稼いだ金を堕胎費だと差し出すと人殺しと詰って、倉庫に呼び出して、お腹踏んで流産させてと横になって目を閉じる。鬼のような父に成績落ちたと怒られたばかりの内田は躊躇のあと狂ったように腹を踏みまくり、関根は「私たち殺人犯よ、この罪は一生ついて回る」と叫んで悶絶。情けない内田は逃げてしまう。それなら医者で処理すればという解釈はこの際不毛で、関根は内田を罰したのだった。

強姦されたのだろうと合理的解釈をする母に小父との仲をケダモノと詰る一夫一婦制の尊重は、この年頃の娘にはあることなんだろうか。化学の授業で硫酸で実験、バカ教師が職員室に引き揚げ、紛失発見して激怒しているが懲罰ものだろう。最後に関根は盗み出した硫酸被るのかとビビらされるが、少女時代の画や金魚にぶっかけて瓶の破片で手を切り、私の青春はこれから始まると内田に告げ、内田は滂沱と涙を流すのだった。

冒頭のブルマアップの体操風景など際物然としているが、裸でピンク映画館の前で男子生徒が批評する件と併せ、総体としてオスへの警告の一環になっている。ホームルームで生徒が、ホームルームは生徒の自主性に任されるのものだと学校当局の帝国主義的を弾圧、予備校化を糾弾して、篠田にもう少し判りやすくやってくれと茶々入れられているのが時代。ミス百合丘を評して「イカスな、あのプロポーズ」というところを「プロフィール」と云ってそのままOKにしているダイニチ映配。低体温から激情へ至る関根好演。

(評価:★3)

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