[コメント] セクレタリー(2002/米)
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少し眠たい中でみたせいか、どうも中盤はとっつきにくかったが、ラストに行くまでの話しの展開は見事だと思う。まさかあそこで放置プレイにするなんて!!えっ?あれってプレイでしょ?
いつも裁縫道具を放さない主人公。何かあれば自傷してMの快感に浸る。何か『ピアニスト』のエリカ(イザベル・ユペール)がかわいそうに見えてくるほどハッピーな話だった。(っていうか、マジこの映画見たらエリカが可哀想で仕方ないんだけど)。
実は弁護士は仮面を被ってて恋愛ベタのS野郎。ファックには興味なくてケツを見ながら背中にイッパツ抜くだけ。方や女性は書類見ながらトイレで自慰。自分で自分のケツを叩きながら恋に悩む。
『ピアニスト』で自らの性器をカミソリで傷つけるシーンがあるのだが、あのシーンは本作の「ヤカンをおしつける」だとかに相当するものなのだが、描き方が全く違う。方や「変態」に、方やコミカルに。
この作品が圧倒的支持を受けたのは、「変態(「変態」という表現は適切ではないと思うのだが・・・)」をコミカルに描いて笑わせつつ、きちんとラブコメを成立させている手腕とソフトな仕上がりでクライマックスできっちりラブコメの王道演出、「主人公はかっこ悪く走る」を実践し、ご機嫌にエンドロールを迎える点だろう(しかもウェディングドレス着て走る、なんてべたべたのラブコメ演出じゃないか)。
そして、何よりもそのフェティッシュをソフトに描く事によって観客にとっつきやすくし、そのフェティッシュを「恋愛ベタ」として、等身大に描く事で感情移入を容易にさせている。
これ、凄い事じゃないかな?この映画のフェティッシュは「皆同じで、皆が思ってる恋愛に対する不安(成功するか否か)」、つまり「誰しもが持つ自らの恋愛に関する不器用な部分のコンプレックス」のメタファーとなっているのだと思う。つまり、この映画はSMだとかフェティッシュだとか溢れてて「変態」って思う人も居ると思うけど、「皆同じなんだよ」って事だろう。
ラスト。数日間放置プレイを続ける男。待ち続ける女性の表情はマジ顔。ラブコメのクライマックスの「ロマンス」のはずなのに、どこか滑稽だ。しかし、そこに本気の愛を感じられる。結果、俺はあのハッピーエンド(文字通りハッピーだね)には納得できた。
『ピアニスト』で衝撃を受けた俺にとって、この映画はまた別の意味で衝撃的だった。
それから撮影。面白い撮影が多々あり、弁護士事務所の中が『シャイニング』に見えた(んな訳ねぇ/笑)。主人公も、内気な性格だったのが、少しずつ大胆になっていき、むしろ当初は弁護士と言う職について「内気」という言葉と無縁に思われた男の方が自分の殻に閉じこもってフェティッシュという事を自分の中に閉じ込めている辺り、微笑ましい(あれ?微笑ましいって何かおかしいかも・・・)。
面白かった。けど、アホな俺はもっと変態ワールドが炸裂してるSM世界を(例えば『殺し屋1』みたいな)想像していただけに、多少拍子抜け。
それでもラブコメとして十分成立させたこのSM映画は、たいしたもんだ。
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