[コメント] 醜女の深情(1914/米)
ヒット舞台劇の映画化だけあって物語設定の豊かさはあるがセネットの演出の方向性に的が絞り切れていないSO-SOコメディ
主演のマリー・ドレスラーでヒットした舞台劇の映画化をマック・セネットが大枚をはたいて製作・監督した映画史上初の長編喜劇映画という意欲作である。当時としては珍しく、またキーストン社としても社運をかけたプロジェクトであったろう原作もののコメディであり、さらには当時のヒット舞台劇とだけあって、ストーリーラインには豊かなドラマを生むだけの土壌がある。しかし、ここでは野心が先行したセネットの気負いか、コメディワーカーゆえの限界か、そうした実りを秘めたストーリーも結局はドタバタに終始してしまい長編ゆえのドラマの膨らみを生むことはかなわず、図らずも演出力の乏しさを露見することとなった無念の一作としか言う他ない。今でこそ、数あるチャップリンのフィルモグラフィの一作として評されるにとどまる本作であるが、本来は主演のマリー・ドレスラーに託されたドラマ性の濃い喜劇であったはず。それにしては、マリー・ドレスラー演ずるティリーの人物造形が当時の数多ある短編喜劇の主役と同質のテンションとあっては、無用の長物というものである。プロデューサーとして眼の付けどころは当時においては抜群ながら、ディレクターとして人間を描くというところまでは届かなかったアンバランスな仕上がり。しかし、リメイクも期待できる位のドラマ性豊かな作品への挑戦という姿勢は良しとしたい。
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