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[コメント] 将軍と参謀と兵(1942/日)

師団長訓示「出来るか出来ぬかを考えるに先立ち、何をしろと命ぜられたかを考ふ可し」。とんでもないブラック企業だ。命じられても出来ないものは出来ない、とは考えさせてくれないのだった。そして映画はこれを否定してくれない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







昭和16年北支戦線。地図上で示した作戦が現場で展開される手法が志向されたが、物資不足の折、上手くいっていない、というのが一般的な評価の由。最後に飛行機が飛んで来てバンサイとなるのは、実際に航空隊と合同歩調を取れるのは稀だったかららしく、そんな段取りしか組めないのに戦争するなよと思う。

途中で何度か見える大陸の大ロング撮影は圧倒的。広大な地平のかなたに黒煙が棚引き、長い兵の列がどこまでも続いている。この撮影で後世に残った作品だろう。山越えで解体した武器を延々運んでいて、厭戦映画かと思わされる。中国とのワースト・コンタクトの感慨がある。

将軍と参謀と兵は描き分けられ、将軍阪妻はノホホンとした調子で部下を気遣い、参謀たちは激論を交わし、兵たちは飯の話ばかりしている。今日も三食カボチャかとボヤいている。阪妻は当番兵をわざわざ呼び止める「卵がうまかったぞ」。太平洋戦争の前からこんな食糧事情だったのだと驚かされる。将軍も兵も奴隷ではないか。アメリカ兵は三食デザート付きの弁当が出たんだぜ。それで戦死した兵隊の6割が餓死だったんだ。

中国軍は撤退を作戦とした。「空室静野」と書き残された空っぽの部屋、これは何も残さずに逃げる敵の戦法なのだと日本兵の上官が部下に説明している。当時らしく敵兵がまるで登場しない作品で、戦争映画としては頼りないようなものなのだが、上記と併せて考えると複雑な印象になる。中国兵に煙に巻かれているような、弄ばれているような印象が残るのだ。そして実際、そのような結果に終わったのだった。

(評価:★2)

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