コメンテータ
ランキング
HELP

[あらすじ] 世界大戦争(1961/日)

プレスセンターの運転手・田村(フランキー堺)は家族の幸せを夢見て懸命に働いていた。妻のお由(乙羽信子)には湯治を、娘の冴子(星由里子)には立派な婚礼を、息子には大学へ行かせてやると心に誓っていた。折しも冴子は下宿している船乗りの青年・高野(宝田明)と恋仲に落ち、とうとう結婚することに。だがその一方で、そんな庶民の感情が全く入る余地もないところで次第に冷戦は深刻化していく。日本国首相(山村聡)達の尽力で和平の道を歩み始めたかに見えた世界も、ついに、緊張の糸が切れた。やがて、最悪の事態が……。
荒馬大介

 東宝特撮陣が「人類の終末」に果敢に挑んだ一本。輸出の際の配慮か、冷戦で火花を散らす国々は全て「連邦国側」「同盟国側」でまとめられており、劇中で国名がはっきりと登場するのは話の舞台となる日本程度になっている。ちなみに海外輸出時の題名は「The Last War」。

 本編では庶民がささいな幸せに向かって暮らす“日常”を、さらに深刻化する“冷戦”を特撮を交えて描く……という、全く違うシチュエーションのものを同時進行させながら話が進む。そして後半になって“冷戦”が、突如“日常”に迫り「絶望」という形になって庶民達に覆い被さる、という構成になっており、それらがラストの、フランキー堺演ずる主人公が絶望に打ちひしがれて虚しく叫ぶさまに結集されている。61年当時現実的に起こりうる恐怖を描いた本作は、『ゴジラ』以上に製作者側の反戦への思いが強く込められた一本となった。

 特撮パートでもクライマックスの核爆発には特に力を注いでいる。核兵器の威力の凄まじさを表現するため、あえて壊れやすいミニチュアを作ることとなったが、その材料は何とウエハースとそば粉。さらにミニチュアとカメラを天地逆にして、数々の建造物があっという間に吹っ飛ぶさまをモノにしたのだった。またキノコ雲を表現するために絵の具を、灼熱地獄と化した大地を表現するために『空の大怪獣ラドン』同様、溶けた鉄を用いている。

(評価:★5)

投票

このあらすじを気に入った人達 (3 人)シーチキン sawa:38 uyo

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のあらすじに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。