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[コメント] 勝手にしやがれ(1959/仏)

ヨレればヨレるほど格好よくなるという、稀有な男の物語。
ねこ@ぱんち

成り行きで殺人を冒してしまうような、街のチンピラにJ・ベルモンド。格好ばっかり一人前で、結構冷酷だったりもするんだけど、J・セバーグ演じるニューヨーク娘だけはなぜか満足に口説けない。その、アンバランスさにまず引き込まれる。

「美人か?」と聞かれて、「変な女なんだ。好きなんだ。それがシャクなんだ」と答える男。イノセント、と言っていい程の男の本音がしみる。思うに、意中の女性から冷たくされ、あげく野垂れ死にするってのは、男だけの密かなあまい夢なのでは。それは、少女が「白馬にまたがった王子様」を夢見るのと同じくらい甘く切実で、そしてやっぱり嘘の皮なのだ。

そう、そんなものは女に通じはしない。リアリストで残酷な女には、男が最後に発した言葉の意味が通じない。女が最後に男の仕草をなぞるショットは、二人が同じ穴のムジナであることを暗示するものだ。男が憧れる値打ちなど、もともとない女なのだ。

そこらへんは全部計算された上で、この究極の「男の夢」は描かれている。それはどこまでもあまく、ほろ苦く、そしてカッコイイ。男がよれよれになればなる程、その格好良さが際立つという、渋い仕掛けになっている。

うう〜ん、ニクいお方!というほかはございません。(笑)脱帽です。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] いくけん ピロちゃんきゅ〜[*] ハイズ[*]

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