狂言誘拐を持ちかける女とそれを引き受ける便利屋の話。狂言だった誘拐が思いもかけぬ展開を見せ、主要人物が罠を掛け合っていく。とはいえ、罠自体は大したことなく、ワイドドラマあたりでもよく見られる程度のもの。そのためかストーリーは時間軸に沿ったものではなく、次々と発端となった場面を回想として入れ込む作りになっている。間違えると何だか分からなくなるリスクの大きい手法だが、何とか前後関係が分かる程度にはなっており、サスペンスものらしく仕上げている。ただし基本は中谷美紀演じる女性に振り回される萩原聖人と光石研の男性陣という構成。どうしてもサスペンスの要素が薄くなってしまうならば、こちらをメインにするより他なかっただろうし、そうすると中谷美紀の採用は正解。これまでの作品でも散見された妖しい魅力が全開。これなら萩原聖人になって振り回されたいという気にさせてくれる。また、ストーリーの構成には重大な欠点（というよりツッコミどころ）がある。オチに関しても中途半端な感じが否めない。