Ａ：「でもあいつらわかってないんだな・・・」

Ｂ：「というと？」

Ａ：「建物の価値だよ。今の億ションがどのくらいな原価なのか知ってる？」

Ｂ：「さあ、４０００万のマンションが土地代込みで八割くらいっていうだろ？てことは・・・」

Ａ：「半値以下だよ、半値以下」

Ｂ：「へえ、じゃあ耐久年数は？」

Ａ：「もちろん一緒。変わるのは内装とか上っ面だけ。そもそも風呂場に液晶テレビ付いてて、何の意味があるっていうの。 あんなもん、壊れたらタイル全部はがして、風呂場中工事しないといけないんだよ。」

Ｂ：「外国製のシステムキッチンや、ドアなんかの建具だって、すごいけどなァ」

Ａ：「素人はそこに騙されちゃうのさ。だいたい向こうのものは、価格自体、バカみたいに安いんだからね。 それを買って来て取り付けただけで、簡単に４〜５倍の値段吹っかけられる。照明だって、いいのはデザイン だけ。よくみりゃ、手を切りそうな安物だってすぐわかる。」

Ｂ：「大理石とかは？広告に「床材はイタリアから直輸入の高級天然石を使用しています」なんてさ」

Ａ：「あんなの信じる方がバカさ。たしかにどっかから輸入してるかもしれないけど、その買いつけ価格 なんて、とても人様にお話できないよ」

Ｂ：「ってことは丸儲けか？」

Ａ：「だからいったろ、半値以下だって。要するに億ションは低価格マンションと比べ物にならない位、 利益を上乗せできる個所が多いのさ。おまけにネットバブルのヤツら、高ければ、高いほどありがたく 買って行く」

Ｂ：「なんだそりゃ？」

Ａ：「適正利潤を確保した上で、本来なら１億５０００万で売るべきマンションがあるとするね。 正直に、１億５０００万で売り出すより、２億とか、２億５０００万とか値付けした方がよほど 早くはけてしまう」

Ｂ：「買った翌日手放そうとしたら、その値段じゃ売れねぇな」

Ａ：「あたり前さ。もともと、それだけの価値しかないんだから」

「はみ出し銀行マンの資産倍増論/横田濱夫」（講談社文庫）より