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[コメント] 顔(1999/日)

「これ、とっとけ!」 (館内爆笑)(2001年4月26日)
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







主人公正子は、家に閉じこもっていた時は、泣いたり笑ったりするのは少女漫画とメロドラマと自分がピクニックでお弁当を頬張っているのを想像する時だけ。自分以外の人間を寄せつけようとしなかった。でも、プチ家出した先で、少女漫画のように見ず知らずのサラリーマンに片思いしてしまったのだ。この瞬間が、彼女にとっても第一のターニングポイント。

そして第二のターニングポイントは、偶発的に妹を殺してしまったこと。警察に怯え、潜伏先で偽名を使い、自分と全く別人の女を演じることによって、それまで能面のような顔に表情を取り戻す。そして他人と関わりをもたないようにしていたためにうまい言葉を持たなかったのが、他人と関わりが持てるようになるにつれて言葉が出て、自分を必要だと言ってくれる人も現れる。

逃亡生活は波乱に満ちていて、漫画やドラマとは比べ物にならないくらいの経験がどっと主人公正子に押し寄せてくるのだった。そんな生活の中、次第に生きる実感を正子は感じていくのだ。また彼女に関わる人々も何かスネに傷を持っていたり、逃げられない運命などを抱えていたりする。しばらく正子と関わるうちに、彼らはある種の覚悟を決めるようになっていくのだった。それまでは一方的に正子が他を拒絶していたので、決して相手の心を動かしたりさせるようなことがなかった。それが、逃亡生活で別の女を演じることによって、他の人間と関わって、気持ちを動かすような人間になっていくのだった。

』は浪花のひとり『テルマ&ルイーズ』かも…と映画を見始めたころは思っていたのだが、女を演じることで自分の存在を確認して、さらに前向きに生きよう(逃亡しよう)という点が『オール・アバウト・マイ・マザー』side Bという感じもした (2001年4月26日)

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] おーい粗茶[*] マグダラの阿闍世王[*]

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