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[コメント] ソリチュード:孤独のかけら(2007/スペイン)

定点観測。2分割の時間と空間。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画はまず全編に亙って固定ショットで構成されており、それはまるで定点観測しているかの如く対象となる人物達の姿を映し出していく。ドラマと言えるほどの劇的なことはほとんど起こらずに、唯一、突然バスが爆発する衝撃的なシーンに於いても、キャメラはただ只管静かにその様子を(たった2カットで)映し出すばかりで、扇情的な演出は一切ない。

そしてなんと言ってもこの映画で印象的なのは全編の約3割を占めている画面2分割の演出なのだが、それは例えば、二人の人物がテーブルを囲み食事をしているシーンなどで二人の様子を並行して映し出すことで、二人の時間が共有されていることを如実に映し出すことに成功していると思われ、またある人物が一見平和な家の中で一人きりで孤独に死んでいく様子をやはり誰もいない光景の映像と2分割で映し出すことで、一人きりで死に絶えていく人の孤独の有様を如実に映し出すことに成功しているとも思われた。つまりはそこには画面2分割の演出による独特の時間と空間の切り取り方が露出していたように思われ、そこにはこの映画の可能性があったように思われたのだった。

だが、それはいいのだが、肝心の主題的な問題の描きように於いては、あまりに淡白な描写が続き、また結末に於いても曖昧にドラマが処理されている為、そこに「孤独(ソリチュード)」と呼べるほどのものが浮き彫りにされていたとは言い難く、それこそ題名の通りに「かけら(フラグメンツ)」でしかないように思われたのが、この映画の限界であったかもしれない。

(評価:★3)

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