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[コメント] X-MEN:ファースト・ジェネレーション(2011/米)

本質はアメコミの実写版という娯楽要素が強いが、適度にドラマ性もあって良い。ミュータントであることへのレイブンの迷いと変化が主軸か。若きチャールズとエリックの描き、後の敵役の背景にそれなりの説得力があるのはとても現代的。
Walden

X-MENシリーズは、常に「差別」という深遠なテーマを扱いつつ、娯楽作品としての見せ所を失わない非常にバランスのとれた良作だと思う。映画化されたこれまでの作品も、好みの差こそあれ、外れはない。

本作は、今は昔の冷戦期のキューバ危機を背景とし、その歴史の裏側で生じたチャールズ(後のプロフェッサーX)とエリック(後のマグニート)の出会いと決別/X-MEN結成までを描いている。

登場人物が多いにもかかわらず、ミュータントそれぞれの能力の個性がきちんと描かれ、それでいて冗長にならず、テンポが良い。各能力の長所と弱点の描き方や、チャールズやエリックが、最初から反則的に強かったわけじゃない点が描かれたりするのも面白い。これって、下手をすると、それぞれの個性が中途半端にしか見られない平凡な作品になっちゃうと思うのだが。

他人と決定的に違うことと、それに対する自分の反応、周りの反応、そして社会の反応を、レイブン(後のミスティーク)やエリックの心境変化を軸に描いている点が上手い。このミュータントに対する差別問題は、現実の社会問題をモチーフにしていることは誰にでも分かる。その上で、観客として彼らに感情移入して映画を観ていると、いつの間にか、娯楽映画らしからぬ深遠なるテーマについて思いをはせている自分に気付く。

一見、ミュータントなどという荒唐無稽なSFを扱いつつ、この作品が決してそこにとどまらない魅力を持つのは、そういう誘導の上手さにもあると思う。それでいて、あまり説教臭くならず、チャールズとエリックのどちらを好きになるかは、観客に委ねられる。そこが、この作品のすごいところ。

2011年6月12日 TOHOシネマズ上大岡

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)死ぬまでシネマ[*]

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