単純な勧善懲悪の話にも，老成してもはや”ダーティー”ではないハリーにも，あまり魅力が感じられなくなってしまった。

このシリーズの第１作が，単なるアクションものではなく，正義と法との葛藤を見事に描いた社会派ドラマでもあったことは，第１作のレビューでも書いたが，この第５作は，その点が見事に欠落してしまって，もはやアウトロー刑事が悪質な犯罪者に正義の鉄槌を下すという単純な話になってしまっている。

それはそれで構わないし，この作品だけ切り離して観るとそれなりに面白いとは思うが，私としては，このシリーズの魅力はそんなところにはないと思う。

このシリーズを必要以上に”社会派”映画としてみるつもりはないが，この第５作をどう評価するかは，良くも悪くもあまりにもインパクトの強かった第１作との性格の違いをどう見るかというところに尽きると思う。これだけを単なるアクション映画として観れば，それなりによくできているだろうが，私は観終わって何となくもの足りない気がした。

個別のシーンでは，テレビＣＭにも使われていたラジコンカーによるカーチェイスのシーン。息詰まるチェイスの結果，結局，車を爆破されてしまうというのは，何ともマヌケでがっかり。

それと…，この作品は，老成した主人公にギラついたところがなくなってしまって魅力半減…ってとこは，寅さんと同じようなパターンだと思った。

ただ，寅さんの場合，若い頃のギラついた魅力はなくなったものの，落ち着いて「万年”やや情けないけど時には頼もしい”おじさん」的なキャラに変わって，それなりにイケてると思う。それに引き替え，ハリーはちょっと精彩を欠いている気がする。精彩を欠いたハリーは，終始，後手後手に回って爽快感もなかったし。