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[コメント] トカレフ(1994/日)

私が阪本順治の力量を見せつけられた最初の映画。ちょっとした裏話→
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







太陽を遮る手。これがつながった時、「太陽が眩しかったから」というカフカの『異邦人』を思い出した。私はそこに宿命を感じた。

(今は無き)黒ビニールのゴミ袋に打ち捨てられた死体。破れて腕が出ているなどといったダサイことをせず、そこに死体があることを分からせる力量。何気なさと衝撃が同居する凄いシーンだと思う。

で、たいした話じゃないけど裏話。

私の友人の先輩で阪本順治の下で働いているという人から「裁判関係に詳しい先生を紹介して欲しい」という問い合わせを受けた。

「次回作の構想を練っていて、ある事件が起きて、その裁判が決着するのにどれくらい時間がかかるものなのか知りたい」とのことだった。どうやら当初は裁判後に起きる復讐劇を想定していたらしい。時期と内容から判断しておそらく本作の構想中だったのだろうと気付いたのは後の事だ。

私が紹介した先生がアドバイスしたのかどうかは不明だし(ご高齢で体調不良だったから断ったと思うが)、話のテンポが悪くなると判断したのだろう、結果として裁判ウンヌンは本作に全然出て来ない。

作り手は、観客が「腑に落ちない」ことを恐れて何かと説明を入れようとする。ところが阪本順治は不親切なくらい説明を排除する(これは皆さんが指摘している通りだ)。これもまた、彼の力量なのだろう。

(評価:★4)

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