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[コメント] 哀れなるものたち(2023/英)

18禁哲学映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







実話を元にした話が嫌いな私は、こういうド「フィクション」で世の中の「本質」を描くタイプの映画が理想です。ですが、私がこれまでに観た『ロブスター』や『女王陛下のお気に入り』に比べて分かりやすい。正直、分かりやすすぎて物足りない。

まあ、最初は『恐怖奇形人間』かと思いましたけどね。「成長しない男に対して女性は成長する物語」という意味では『蜜のあわれ』にも似ているとも思いました。どっちも石井監督。

「女性の成長」という点では、本の「知識」と娼館での「肉体」で彼女は学び、成長していくんですよね。言い換えれば「脳」と「身体」。ああ、ここで設定に舞い戻るんだと思ったら、めちゃめちゃレベル高い構成のような気がしてきました。

もっと言うと、原作者のアラスター・グレイが目指した(パロった)のは「フランケンシュタイン」でしょうが、神の領域に踏み込んだ罪や科学への警鐘というテーマではなく、「人が人を抑制することの罪」を描いているように思います。

そう考えると、閉じ込められた安全空間を飛び出して世界を知ろうとする主人公が、非常に前向きで真っ当に見えてくる。我々が住む現実の方が、誰かに閉じ込められてもいないのに、自ら世界を閉じてしまっている気がします。このド「フィクション」は、逆説的に世の中の「本質」を射抜いているのです。

ところでこの映画の胎児、というか「脳」ですが、男か女か明確にしてない気がするんですけど、どうでしょう?見落としたのかな?私は男じゃないかと思うんです。そう考えると、性同一障害なのかもしれません。ま、明示していないから、そこがテーマではないし、むしろ「男でも女でもない存在」なのかもしれませんけどね。

映画は18禁で、それはもちろん性的描写のせいなんですが、私は別な意味で18禁のような気がするんです。この映画(というか話)は哲学です。でも哲学は世界を変えられない。 そんな世の中の「本質」あるいは「現実」を、子供はまだ知っちゃいけない。子供が知るには、ちょっと危ない思想。そういう意味で18禁映画。

余談

ウィレム・デフォーの意思は誰かが継ぐんだな。サム・ライミ『スパイダーマン』と一緒。

(2024.01.27 吉祥寺オデヲンにて鑑賞)

(評価:★4)

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