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[コメント] フェイシズ(1968/米)

階段の使い方の手本。ワーッハッハッハ…シーン……
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ リプリーズ」という特集上映で初鑑賞。カサヴェテス作品を特集上映されてもさ、重すぎて続けて観たかねーんですよ。結論を先に言うと、この映画★5付けるけど、二度と観たくない(笑)。胃もたれする。

とにかく不快な映画です。だいたい俺、はしゃいでる大人が大嫌いだからさ。ワーッハッハッハ…とか、ずーっと笑ってて、ずーっと不快。でもね、シーン……ってなってから俄然面白い。超面白い。めちゃくちゃ面白い。二度と観たくないけど(笑)。

なんでもカサヴェテスが、前の監督作(『愛の奇跡』なのかな?)で揉めたのか失敗したのか、いずれにせよハリウッドに嫌気が差してニューヨークに戻って撮った作品だとか。劇中、「ロスは好き?」「気候は」みたいな台詞がありますが、カサヴェテスの本音だと思うんですよね。また、「社会の中心の年配男性は若い男性に取って代わられるのを恐れている」「(若い男自身は)そんなこと思ってないけどね」みたいな台詞があります。全然うろ覚えですけど。これもね、ハリウッドで揉めたカサヴェテス(当時30代前半)の本音だと思うんです。

どうして若い男、つまりカサヴェテスは、今の社会の中心と取って代わろうと思っていないのか?今となれば、彼がハリウッドとは全然違う方向を目指していたからであることは明らかです。本作の冒頭で、映画への出資の話が出て、「ビジネス版『甘い生活』」という台詞が出てきます。また、「ベルイマンの映画を上映している」という台詞もでてきます。つまりカサヴェテスが目指したのは、ハリウッド的なそれではなく、フェリーニやベルイマン的な「映画」だったのです。

この映画、『FACES』というタイトル通り、アップが異常に多いのですが、私はあまり「表情」が読み取れませんでした。正しくは、愛想笑いなど「本音」の見えない「建前」の顔が多いように思えたんです。その一方で、「男の裸」が印象的なんですよね。2人の男に裸のシーンが無駄にあるように思えるんです。なんだか、実は「顔と身体」の映画のような気がします。ダンスとかもね。つまり、人の感情は必ずしも「顔」に出るものではないのだということをカサヴェテスは描いているような気がします。そしてラストの階段の方が、人々の愛想笑いよりも多くを物語っているような気がするのです。

(2023.07.16 渋谷シアター・イメージフォーラムにて鑑賞)

(評価:★5)

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