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[コメント] 格子なき牢獄(1938/仏)

俳優のその後の履歴からヴィジー政権との関わりを無視して観るのが難しい映画だが、皮肉なことに作品自体は純粋にフランス建国の理念を説いて優れている。「必要なのは鉄拳の脅しではありません。それが困難でも、愛情です」
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これが法務大臣の指示だというのだからいい国だ。この思想で脱走犯のコリンヌ・リシュエールを町へ使いにやる前半が白眉。また脱走かと追う警官を彼女が揶揄う件がいい。

後半は三角関係になるのだが、コリンヌを救ったのはアニー・デュコーの愛情だったのだから、それが進んでのっぴきならない処に進んでしまう、というのは説得力がある切り口だった。フロイトは患者との一線を越えた関係について色々書き残しているが、同様の視点だろう。救済とは究極には一対一でしかなされないものなんだろうと思わされる。

宿舎の夜中の叛乱は『操行ゼロ』がちょっと想起させられるがベクトルは逆を向いている。個人的にはコリンヌ・リシュエールのマグロ顔は好みではないが、本邦で伝説的に支持されたのは判る気がする。あのスラリとした背筋が重要なんだろう。このヒット作、清水宏ほか、本邦の孤児院ものに多大の影響を与えたと思われる。英米圏では有名でないのか、英Wikiの記述などやたら短いのが意外。

(評価:★4)

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