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[コメント] かくも長き不在(1960/仏)

セーヌ川の描写がとても美しい。序盤、アニタがジョルジュを探して川沿いに歩み、カットが変わる度に陽が暮れていって最後は夜になる件がとてもいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「赤いシリーズ」(野瀬慶子!)はじめ、私ら世代は記憶喪失のトンデモドラマを幼少からたくさん見せられてきた。だから記憶喪失イコール通俗という先入観がある。本作の方が先に撮られたのだ、と理性で自分を諭しながら観ることになる(戦争と記憶喪失という主題は『心の旅路』(42)がさらに先行例)。16年ぐらいで元亭主は判らなくなるものだろうか、音楽と味は本当に忘れないものなんだろうか、等々の雑念が入ってくるのを止められない処がある。しかし終盤、これらはどうでもよくなる。

結局、ジョルジュ・ウィルソンアリダ・ヴァリの亭主ではなかった、という方に傾いたのだろうか。アリダ・ヴァリの饒舌は哀しいが一方で鬱陶しいと思わせるものもある。だからこそあの無言になるダンスシーンが心に沁みる、という観客の生理もあるだろう。彼女は黙ってジョルジュ・ウィルソンの頭の瘤をさわる、これが鏡に映る。彼はこれを感じて黙って去る。

そしてホールドアップが胸を打つ。彼は川辺に住んでいるのは、あれは世間から隠れていたのだ、いまも逃走中なのだと突然に判明するのだった(彼のような戦病者をフランスは保護しないのだろうか、という疑問が残る処もある。彼はドイツだけでなくフランスからも逃げているのだろうか)。再見。

(評価:★4)

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