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[コメント] 大魔神怒る(1966/日)

頬を赤らめる埴生魔神見て村人は不吉と狼狽えるのだが、藤村志保見て照れているとしか思われず、この含みで全編通されるのが巧み。悪党神田隆のバカノリが素晴らしく、岩窟島と湖の美術が印象深い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







八雲の湖挟む千草と分家の名越。千草の後背部の山向こうには弾正神田隆が恐怖政治している御子柴。千草も攻めようと悪だくみ思いついて大笑い。追善法要で可憐に踊る藤村志保ら名越の一行が湖の「神の島」の埴輪魔神参ると、岩山に鎮座まします埴生の顔がぽっと赤くなる。藤村見て照れているとしか思われないのだが、一行は謀反の予兆と驚嘆。

千草は御子柴からの難民を受け入れて開墾に携わらせていたのだが彼等はスパイで、献納された米俵から『七人の侍』のミフネみたいな格好して飛び出してきて、そこに神田が大群引き連れて制圧。千草の大将で藤村の許嫁の十郎本郷功次郎は逃げ、匿っただろうとインネンつけて神田は隣の名越に攻め入り領主で藤村の父内田朝雄をさっさと刺して征服。内田は皆の衆に戦って勝てる相手ではない、御神像様が護ってくださると云い残して絶命。藤村の兄も人質。

神田はチャンチャラおかしいぜと埴生に爆弾しかけて爆破。埴生は首から吹っ飛ぶナイスな美術。「この世に祟りなどあってたまるか」と爆弾犯人は去るが、落石の下敷きになった藤村と家来丸井太郎はかすり傷ひとつ負わず、御心までは奪えないと藤村は島に留まり祈祷。

そこに本郷が半死半生で流れ着くのはご都合主義だが本作の文脈では神の御心。追手の御子柴軍は公園みたいな噴水で転覆。本郷と家来平泉征(男前)は名越の城に潜入、ナイスに酔っ払う神田を捕らえるが失敗してチャンバラ。冒頭に逃げてきた善男善女のカップルはこの群衆のなかに登場しており、反逆した開墾村には入らなかった模様。この奧さんが美人なのだが誰だろう。もっと活躍してほしかったが登場はこのくらい。

再び逃げた本郷を差し出せと神田の軍勢は名越に迫り、いろいろあってと捉えられ、藤村の兄たち大勢とともに公開処刑。彼等は棒杭に荒縄で巻かれている。「神を畏れよ」「俺は神より強いんだ。わはは」と神田は座興で藤村だけを十字架に縛り火あぶり。とんでもない悪党である。「神様、今こそ命を捧げます。でも他の人は殺させないで」と泣く藤村、すると暴風が吹き火あぶりの火は消えて、水没地点の湖からいつの間にか身体の戻った埴輪が登場、大魔神に変身する。やはり藤村が好みだったと判る。

両側滝の『十戒』美術のなかを足音高く処刑場に登場、頬膨らませて慌てる神田がやはり素晴らしい。十字架は引っこ抜かれ、大魔神眺める藤村が別嬪。本郷人質に取る神田を大魔神は構わず成敗。名越の屋敷無茶苦茶にして、今度は火薬も効かず(煙のなかから浮かび上がる大魔神がいい)、ひとり舟で逃げる神田をマストで十字架の火あぶりにして復讐するのだった。

藤村が大魔神の背中に手を合わせると大魔神は振り向き、愛を持って見つめ合い、藤村の涙を見て消滅。第1作のように砂になり崩れ落ちる美術はなく消え去るのはがっかり。湖の底から鐘の音が聞こえるという印象的な件で完。神の島の鐘は中盤、敵方に崖下に落とされて割れて湖に沈んでいる。

(評価:★3)

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