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[コメント] 月光の囁き(1999/日)

SMにはルールがあり、鞭打ちの回数など人によって決まっており、指定九回のところを十回叩くとMが怒り出すらしい。そういう穿った描写に欠けるのが本作の不満、これではMはいずれ死ぬしかないだろうに。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







水橋研二は五月つぐみのロッカーのブルマの匂い嗅ぎ、付き合い始めて盗撮の写真焼き、しかし全部ではなく、セックスに失敗して慰められて「もう一人の僕が囁いた、それは嘘だと」とトイレの音を盗録して聞きながらオナニー。つぐみは彼のベッドに自分の靴下、机に残った自分の写真や登録テープを発見するが机に放置された鍵から、水橋は発見させてつぐみを試したのだろう。変態とつぐみは去るが、雨中に家の前に佇み「俺は五月の犬や」「犬が主人の命令聞くんは主人と一緒にいたいから」と告白する。

普通なら学校に通報されるところだが、映画はここからつぐみがサドに目覚める過程を語る。草野康太とのデートを見せつけ、押入れから草野とのセックスを見せつけ、押入れでオナニー始めた水橋の股間を踏みつける。「あんたは自分のことばっかりや」「神様が間違うたんじゃ」「何や気持ちようなってきたわ」と絶妙な関係ができあがる。この辺りの語り口は上手いものだ。

高校生のくせに温泉行くのがロマンポルノっぽく、つぐみはふたりを鉢合わせさせ、滝の上で水橋に「足が汚れた」と靴先舐めさせる。驚愕する草野の揺らぐ常識が本作の見処。どうせならもっと展開させてほしかったが、ここで草野の出番は終わってしまう。草野が訴えて(だって自殺未遂なのだから)学園が大騒ぎ、追われるふたり、などというありがちな顚末にならないのが本作の倫理観、なんでも相対化する当世風なのだろう。

つぐみの命令に従い滝に投身した水橋は幸か不幸か死にきれず、入院してギブスはめて、つぐみにコーラ買えジンジャーエールに替えろと指示されて松葉杖で自販機の往復。角隠し取って暴走する女ごころというニュアンスがあるが批判を全くしないのも当世風と思われた。最後は河原で「海でも行こうか」「うん」とスピッツが流れて爽やかに終わる。

この唐突な転回の収束は作劇としては鮮やかなものだが、以降このふたりはどうなるのだろうと思いを馳せると、あんまりいい未来は思い描けず、水橋は海で早速に土佐衛門になるぐらいなのだろうと案じられた。鹿島辺りのロケらしく、関西弁みたいだが茨城もこんな方言というのが発見。

(評価:★3)

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