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[コメント] 団栗と椎の実(1941/日)

好きに子供遊ばせる清水にあって珍しいスパルタ教育映画か。「これからの世の中は何をするにも命懸けだよ」と父親の大山健二は呟く。この無垢の歌は『蜂の巣の子供たち』(48)の経験の歌に至るだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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序盤は、いいじゃないか女の子と遊んでも、と思う。大山が息子を椎の木のうえに残して帰ってきて、雨が降ってきて、迎えにいったら息子はすれ違いに、大量の椎の実を持って帰って来ていて、次のショットではもう親子は布団の中にいる。無骨にスキップした編集が無骨な親子関係に相応しく感じ良い。渡る途中で四つん這いになっちゃう急流の橋の反復がいい。喧嘩して友達になるラストは当時らしい理想。

木登りの上へ上へ向かう光に溢れたショットは『蜂の巣の子供たち』のクライマックス、豊が義坊を背負って山を登る長い長いショットが想起され、胸が熱くなった。本作の無垢の歌はあの戦後作の経験の歌との対照がある。本作では腕白志向の上昇運動が、あの戦後作では痛みと共に反復されたのだった。「これからの世の中は何をするにも命懸けだよ」なる大山の科白が、戦後には別の位相で立ち現れた。「今の若者は、辛いことに耐えるぐらい平気だよ」という木下・森本薫の『歓呼の町』の科白とWるものがあると思った。

(評価:★4)

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