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[コメント] 性と幸福(1950/日)

受胎調節と人工授精を人民に啓蒙する理研映画。ゴムスポンジ避妊具の膣挿入の説明などは必要なものなのだろうが、挟まれる寸劇が奇怪過ぎてぶっ飛ばされる。否応なく記憶に刻まれる怪作、正真正銘のトンデモ映画だ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







寸劇は人口爆発の恐怖を描いている。産児制限が話題の川島雄三『愛のお荷物』が55年という時代背景。新婚旅行のときは爽やかだった夫婦が今はボロ屋住まい。髪の手入れもしない女房は庭で薪割り。そして彼女は亭主に申し訳なさそうに囁く。「またできちゃった」隣室には子供が寿司詰めに寝ている。この貧乏も子供が多いからということなんだろう。「自然に任せるのは人間性の冒涜」とナレが云い、子沢山の豚の授乳が写されたりする。そして夫は色気のない妻を見限り、街娼の赤い唇に誘われて夜の街。そんなことまで描かんでもいいだろうに。亭主は豚のような動物だから女房はしっかりしろと云わんばかりである。子供のできない夫婦は庭で兎飼っている。こちらは貧乏そうではないが庭のセットは明らかに同じものだった。

どうしたら良かったか、「受胎調節」「我が家の人口計画」とやたら字幕。オギノ博士の偉業など紹介しつつ、受胎コントロールは対卵子法と対精子法があると解説。対卵子法はオギノ式で月経前12〜19日前のナニは避けよと説かれる。対精子法は避妊具、丸っこいゴムスポンジを薬塗って膣内に挿入せよという始めて見る避妊具。挿入方法はアニメで解説される。あとはコンドームとペッサリー。ゴムは80センチ引っ張って5分以上切れないことが必須らしい。夫の精子が弱くて卵子に辿り着かない症状の夫婦には人工授精。精子を挿入する無骨な金属の管も紹介される。性教育は全国700か所の保健所でと案内があるが、ネットで調べると今は全国で500か所未満。昔の行政は充実していたものだ。

最後に再び寸劇があり、上記性教育を守った明るい家族が仲良く踏切渡っているのだが、子供が五人もいる。五人いるのが成功例なのだろうか、という疑問符に答えのないまま無責任に映画は終わる。猪俣勝人って何者だろう。産婦人科の団体の製作。

(評価:★2)

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