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[コメント] 太平洋戦争 謎の戦艦陸奥(1960/日)

新東宝史劇ではなく新東宝際物の類。アラカンがA級戦犯嶋田繁太郎を明治天皇そのままに演ずるのは構わないのだろうか。映画は冒頭字幕で「登場人物を始め総て創作」と断り入れただけで無茶する。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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下手糞な模型と実写の組合せが奇怪なタイトルバック。ミッドウェイ海戦敗戦から始まる。いつも思うのだが、盗聴された云々とは別に、魚雷と爆弾を取り替えねばならない構造が失敗だったんではないのだらうか。陸奥は指令により「転進」。副長の天知茂抵抗するが艦長沼田曜一は従う。菅原文太が戦うべきだったと意見具申。

沼田は答えて「戦いたかったのはお前だけではない」。A級戦犯嶋田繁太郎アラカンから決して沈めるなとの指示の回想。明治天皇かと思った。中尉の宇津井健も陸奥は国民の信仰があると語る。「陸奥」は当時、姉妹艦「長門」と並んで世界最大の16インチ(41センチ)砲を搭載しており、これはイギリスになく、アメリカにも完成している「メリーランド」ほか建造中3隻のコロラド級のみ。連合艦隊旗艦を務めていた。

柱島沖に秘密停泊。その後も出動命令はなく上陸許可。やる気マンマンの部下らはドンチャン騒ぎに殴り合い。命令は終盤の爆破直前についに出るのだが、そこで飛行兵でもないのに何で予科練の歌唄うのだろう。

日本に潜在しているスパイたちは戦意喪失を目論むべく爆沈計画、という創作。怪しいウィリアム・ロスはダンケシェーンとか語喋っているからドイツ人らしいが、何でドイツ人が暗躍するかはよく判らない。ドイツ大使館員と偽って海軍の秘密クラブに潜入して天知と出会い、マダムの小畑絹子はロスと目線の交換。しかし彼女は陸奥設計して盗まれた父は処刑されたと軍への恨みを述べて天知を毒蛾にかけ、私は貴方を殺したくない、陸奥さえなければと囁いて、終盤の乱闘で彼女もロスも死んじゃう。

細川俊夫は平和主義者で前線にやられ、甥の天知に平和のための戦争はありえない、罪悪だ、人類の破滅だ、生きることこそ本当の勇気がいるのだと云い残す。続くカットで神近兵曹長中岡弘は、オジサン峰洋二に戦争は残酷だと吹き込まれていきなり陸奥沈めようと囁くのが、実に微妙な繋ぎが面白かった。映画は細川の平和思想をいくらでも悪用できると語るのだろう。賛同はしないが、繋ぎのテク自体が印象に残る。

そして峰重は爆弾の在処を和田に聞こえよがしに伝える(準備できているのが実に無理臭い)。峰はロスに指示されていた。中岡は手榴弾で陸奥を爆破は夢オチ。実行できずにいる中岡を、峰は海岸でウイスキー無理矢理呑ませて海に沈めて殺害。続いて水谷一等水兵菊川大二郎に爆弾持たせて失敗。五来兵曹長和田桂之助は思想問題で禁錮室におり、妹の安定して可愛い北沢典子は三つ編みにして心痛めて面会。牡丹餅差し入れに添えられた手紙は軍法会議にかけられるぞ、戦争さえなければいいのだとロスの持っていた12時に爆発する小型爆弾付。彼がどうなったのかその後描かれないのはなぜだったんだろう。北沢が再登場しないのはさらにいけない。北沢もスパイだったのだろうか。

峰が搬入した火薬に爆弾が仕込まれて、捜索虚しくボンボン爆破して陸奥沈没。遺骨収集が望まれると断りが入る。真相は「直前に陸奥で窃盗事件が頻発しており、その容疑者に対する査問が行われる寸前であったことから、人為的な爆発である可能性が高いとされる」(Wiki)とのこと。

(評価:★3)

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