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[コメント] 出撃(1964/日)

東映のようにケツまくる快優もおらず東宝のように右翼の地金も出さず、ただ日活の真面目な面々で真面目な滝沢演出の下、真面目に作られた特攻映画。芦川いづみは再び特攻兵を追いかけ、収束に突然よくなる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







飛行機の故障で帰ってきた浜田光夫、私たちのせいと泣く女子挺身隊の娘たち、怪我を隠して出撃する和田浩治(俺たちが死ねば日本は勝てるんだよ)、高原の整備兵の悲哀。前夜祭で無礼講になるでもなく女郎買う訳でもなく。死んだら蛍になると約束した同期が蛍になって帰ってくる。いい話だがこれも既視感。既視感があっては駄目な訳ではないが、印象薄くなるのはどうしようもない。

現地にフィアンセの伊藤孝雄を訪ねて押しかけて来たけど逢わせて貰えない芦川いづみ。出撃を追いかけて見送ったら伊藤は故障で帰ってきて、お前のせいで帰ってきたみたいじゃないかと伊藤は弱る。彼の繰り返し帰還(三度目と)の件はナンセンスな笑いがあるが、沈鬱な特攻映画に相応しいのかどうか判らない。

しかし、なんで私隠れなきゃいけないのよと芦川に怒らせる件が良かった。特攻から外すと云われた伊藤は芦川の下宿に踏み込みいい争い。本当のことを口走る芦川の口を手で塞ぐ伊藤のカットがいい。翌日に伊藤は飛行練習、整備者は悦び、彼に万歳するために子供が歩けるようになったりするが、すべてイロニーに反転し伊藤は墜落。どうしてこうなったのだろうと芦川は悩む。軍は不慮死の発表。原作ものだが、ここは事実なのだろうと思われた。

登場人物が多過ぎて名前で物語が廻されるので細部が判りにくい処がある。出撃前に円陣組んで ♪男なら 男なら 男ならやって散れ(やってみなではない)と唄っている。特攻の不味い辞世を記者は褒め、という辞世の句詠んで笑い合うという優れた件があった。戦争シーンは記録フィルムなんだろうが、室内撮影は上等のモノクロ。当時のの知覧が荒地になっている光景が記録されている。

(評価:★4)

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