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[コメント] 素足の娘(1957/日)

好色な造船所に於ける南田洋子の度重なるセクハラ体験が綴られ、昭和初年に女ひとり働きに出る苦労が具体的に語られている。金子信雄は殆ど悪魔であり、全てを肯定してしまう斎藤高順のオヅ調の音楽が調子外れな印象を残す。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







雇われた食堂の親爺の佐野浅夫はバカだし、しつこい近藤宏もギョロ目を剥いている。そして医師の金子信雄がすごい。すごく簡単だと南田の歯を無理矢理抜いて、気持ち悪くなって病室のベッドに横になった南田に襲いかかる。不潔だと裸になり夜の海に飛び込む南田。金子は渡辺美佐子を妊娠させて人工流産(どのようなものなんだろう)させている。彼女のために私も妊娠したと南田は金子を強請り、取った金を渡辺に渡す(なお、金子はここで最後、南田をアプレと貶しているが、設定は戦前ではないのだろうか疑問)。

一方、爽やかな隣室の技師二谷英明が足の悪い金持ちの娘と結婚して、金目当てだと囁かれる嫉妬など、詰まらないことを描くものだと思わされる。長門裕之も隣に越してきた南田にいきなり夜這いしてくる。南田は最後、叔父に呼ばれて東京へ。長門の見送りを受けているが、爽やかな後味とは云い難い。

時代は1918年、佐多稲子は14歳。兵庫県は赤穂郡相生町、播磨造船所。大正9年には7千人余の工員を抱え、町には映画館もあった由。景気がいいと映画でも噂話になっている。立派な商店街が再現され、小間物屋の天井から吊るされた大量の土瓶が印象的。

しかし南田は、単身働く父の大坂志郎が仕送りを送ってこないから自分も働き口を求めてやって父を頼ったのだった。お父さんも自分が喰うだけで精一杯と大阪は云い訳している。

小説は自伝、私小説ではなくフィクションだが、特定された人物が迷惑を受けるトラブルがあったらしい。当時のベストセラーで、相生市の中央公園には本作の文学碑があるとのこと。原作は面白いのだろう。

(評価:★3)

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