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[コメント] 出撃(1963/日)

芦川いづみの「貴方が飛んだら日本は勝てるの」なる発言、昨今の右翼映画なら総出で窘めにかかる処だろうが本作では称揚される。『永遠の0』のネタ元のような、死んだら蛍になる、靖国の桜で会おう、なる遺言は、前者は守られるが後者は黙殺される。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「二本も三本も指切って血で書かれた」手紙は狂気のようだし、「特攻は志願も強制も同じことだ」という諦念は深いものがある。藤竜也の特攻「志願」を姉の吉行和子は母の奈良岡朋子に伝えない。ここには大っぴらにできない特攻拒否のニュアンスがある。映画は各人の細かな差異を救い上げようとしている。

「実話にもとづく」と冒頭に示されている。三度も航空機の不調で戻ってくる伊藤孝雄とは、小説より奇なりの印象が残る。妻への未練で引き返したと疑われ、夫婦が批難され、試験飛行で伊藤は墜落してしまう。脚の悪い少年がこの飛行を見上げて歩き出す。なんという皮肉だったことか。『世界大戦争』の八住は本作でも見事だった。特撮はないに等しいがそこを観る映画ではない。

(評価:★4)

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