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[コメント] 優雅な世界(2007/韓国)

バラバラなピースが全て終盤のワンシーンで突然に意味を持って立ち上がる、という物語技法のひとつの理想を見事に達成しており、しかもその内容は切実だ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







留学先カナダで妻と子供がはしゃぐビデオを観てラーメンぶちまけるソン・ガンホ。ここで映画は点景の集積の印象から一挙に主題を示す。これが見事だ。こんなに巧くいく例は少なかろう。空港で父に振り向かず飛行機に向かう娘のワンショットがとても効いている。

ここでガンホは自分こそ騙されていると気づくのだろう。それは妻子にではなく社会にである。生殖した途端にメスに喰い殺されるオスに近い。ヤクザ映画はここでも比喩であり、ガンホが大企業の社員だって同じ映画が作れただろうと思う。

儒教社会の韓国にしてこうなのだという感慨がある。ヤクザの自省は『竜二』など想起されるがガンホのキャラが加えるコメディのニュアンスがとてもいい。たまに真面目になるオ・ダルスもいい。この人の黒子はいつも小沢昭一が思い出される。

ベストショットは中盤のコンビニから路上への刃物沙汰で、とてもよく撮れている。コメディタッチの音楽も素敵だ。英題The Show Must Go onは.巧みなタイトルだが丁寧すぎてネタバレでもあるだろう。

(評価:★5)

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