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[コメント] 東京アンタッチャブル(1962/日)

拡大版『警視庁物語』シリーズの趣で、東京東映の実力を見せつける全編見処の好篇。味な脇役勢揃いでチンピラ天国の様相が愉しい。ただホンは善悪明快で娯楽篇寄りで、悪人への視線が複雑だったシリーズから後退している。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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物語は脱獄した丹波哲郎が隠した盗品を探しに舞い戻り、三國連太郎高倉健の刑事が追って最後は丹波が転落死、というだけのもの。冒頭の脱獄がまず凄い。外で作業していた囚人たちがにわか豪雨で避難するなか、梯子のうえで鉄格子にペンキ塗っていた丹波はそのまま梯子使って二階の屋根から塀、塀から荒地へと逃走する様が長回しで延々捉えられる。塀を跨ぐ丹波接写に力感が溢れている。二年前の宝石強盗の回想もすごい。町中の宝石店のシャッターをトラックに紐かけて曳き倒し、ショーウィンドウかち割る。

丹波と共犯者三人は興業会社から「相撲カルチョ」の現金強奪して小笠原慶子誘拐して(現金だけ取ればいいと思うのだが)クルマで逃走、騒ぐ彼女を(猿ぐつわ用意したらいいのにと思うが)丹波はニヒルに射殺、共犯はビビりまくり、みんなで抱えて藪に捨てるとき「ニチニのサン」と掛け声かけるのが可笑しいブラックユーモア。捕まった三人はお互いが吐いたと思い込んで昔の宝石ドロまで全部告白してしまう。潮健児のコメディが愉しい。禿げ刑事相馬剛三もいい味。

筑波久子のマンション(丹波のノックにパパと応えるのが可笑しい)の風呂場の窓(風呂桶は簡易サイズ)からの丹波逃走と健さんの追跡も愉しい。健さんが窓から出て外壁に這いつくと、壁の角を同じ格好で丹波が這っているのだった。後楽園の三田佳子とのワンショットだけのカート空撮。マダム渡辺美佐子の三國への猛烈アタックも平凡な件だが撮影がとても充実している。階段でのアップ、間を置いた長いキスがいい。多忙な三國は去って美佐子お怒り。

手負いの丹波は三田の住まいに立て籠もり。ウィスキーとピンセットで胸から銃弾抜き出す件は局部アップ込で三田失神。健さん訪問の際、三田を立たせて後ろでピストル付きつける丹波の件の、佇立した三田の微妙に怯えた佇まいが素晴らしく、倉庫の格闘における入り乱れた三田奪還のアクション、丹波の屋根からの墜落のギミックもいい。

収束は刑事の久々の休日、三國はフクレた美佐子にフラれたまま子供に会いに行き、高倉と三田はデートという軽いハッピーエンド。丹波が死んだまま放置されたのが、この映画の掟だぜと云っているかのようだった。

(評価:★4)

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