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[コメント] 死の街を逃れて(1952/日)

第一級の厭戦映画。細部がリアルで胸に迫ってくる。とんでもない話だ、全く。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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原作者の体験談なのだろう。細部がリアルで胸に迫ってくる。何度も振り出しに戻るジレンマは単に逃亡劇のバリエーションと考えても秀逸だし全く無念、水戸光子の息子が歩きながら眠ってしまう件や野犬に飛びかかられる件は忘れ難く、細川ちか子の発狂も厳粛で鉄橋の危うさは観ていて苦しくなる。自分らだけ逃げてしまった日本軍と彼女らの距離感も、彼女らの生存は偶然であるという最後の字幕も苦い。

本作は厭戦映画として一級品だ。戦争とは男がはじめて女が苦しむ、という紋切型にリアルを加えている。若尾文子のデヴュー作であるが、そういう特典がなければ作品を観られなかったとすれば、まだまだ貧しい環境に観客はいると思わざるを得ない。なお若尾は水浴シーンがあり、後年我々は彼女の裸体の吹き替えばかり見せられることになるが、その点でも画期的である。どうでもよいことだが。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)青山実花

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