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[コメント] チスル(2012/韓国)

悲劇的事件をアートっぽく撮って虻蜂取らず。派手に撮るばかりなのは素人と証明して判りやすく、劇伴だけお涙頂戴なのがキツい。別の監督で全部やり直し希望。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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いったい、この映画は済州島4・3事件を扱っているのだろうか。そう信じる必要を覚えないのだ。「アカは皆殺し」みたいな類型的なフレーズを超える認識は驚くべきことに皆無。だた、沖縄そっくりの石造りの低い壁が築かれた町並みや、洞窟の多い岩山の地形だけは嘘をつかないのだろう。その他は全てゾンビのスーパーマーケット程度の匿名性で連続殺人が展開するばかり。ほとんどエクスプロイテーション映画。この監督が理解していないのは歴史の不可逆性、一回性である。そこを抉り出さなければ映画にならない。

海岸線5キロより内側にいると射殺というルールは史実が『バトル・ロワイヤル』のようなゲームに替えられている。序盤の洞窟に人が犇めくショットからして、キャメラのこちら側にまだ座る余地がありそうで下手糞な描写だ。老若男女寄り添った洞窟の件が二度あるが大して深みもない。みんな左翼劇団の真面目な俳優なんだろうという感じはするが無駄遣い。キャメラの連続横移動は必要だっただろうか。脱走を相談する兵士ふたりがヘルメットの頭を雪に逆立ちする件はグロテスクコメディのつもりなのだろうか。現場以外の周辺事情を何も語らないのも匿名性を高めるだけのマイナス要因でしかなかった。本作で一番興味深いのはラストの字幕による解説である。

撮りたい画を持っている監督であるのは判るが、派手に撮るばかりなのは素人である。この監督、他に映画を撮らなかったのもむべなるかなという気がする。『ニーチェの馬』みたいな、背景のピンボケが貧しいひと昔前のデジタルモノクロ撮影も詰まらない。

(評価:★2)

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